一人ご飯日記

おいしいご飯について書く予定です(たぶん)

超絶品!死ぬまでに一度は食べてほしい煮込み10選

ああ。いかにもインターネット!みたいなタイトルをつけてしまった。

「超絶品!死ぬまでに一度は食べてほしい煮込み10選」て。読んでほしすぎて大仰な形容詞をつけて数字を入れて読み手の注意を引くタイトル、もうネット記事まるだしである。

でも、わかってほしい。それくらい食べてほしいのである。今回ここに掲載するのは、いずれも過去に私がテレビ東京「二軒目どうする?」で紹介したお店。大衆酒場を飲み歩く、というコンセプトがゆえに、番組内での煮込み登場率は高い。MCのTOKIO松岡さんが無類の煮込み好きなのもある。なんたって、飼い犬の名前も「煮込み」である。なお、チワワの煮込みちゃんはめちゃくちゃかわいい。

さて、番組8年の歴史の中で、群を抜いておいしい煮込みをここにまとめてみた。

ちなみに順不同。ランキングはつけられないくらいに全部うまい。全部行ってくれ!!

◆店の個性が光る煮込み6選

大井町「のぼる」

順不同で全部うまい、と言いつつも、初めて食べたときに旨すぎて脳天がかち割られるくらいの衝撃があったという点で、これが一番かもしれない。それくらい記憶に残っている。

見てほしい。この澄んだスープを。

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実はこの店、「二軒目どうする?」で紹介したのだが、とある後述する理由で煮込みを取り上げることができなかった。

そのときは魚がメインの店として紹介している。

この通り、この店の魚はめちゃくちゃ旨い。

でももう、身も蓋もないことを言うと旨い店はなんでもうまいのだ。

ある一つのジャンルに特化していて頂点まで極めているタイプのお店もあり、もちろんそういう店もとんでもなく旨い。

「のぼる」に関しては、あらゆるジャンルのツマミを出していて、それがどれもこれも高水準。

ほら、たまにいるでしょ。医学部出ている上でスポーツでも全国行った経験があって今は役者で人気を得ているみたいな、何をやらせても凄い人。この店は、そういう店なのだ。

「熟成牛すじのあっさり煮込み」という名前がすでにおいしい。ザブトンとヒレのすじ肉だけを使っていて、牛すじに甘みがある分、お出汁がスッキリしていて、七味がいいアクセントになっている。

ついでに、だし巻き卵が凄くプルプルしているので、その動画も載せておく。私はプルプルしているものを揺らさずにはいられない。楽しいからだ。

 

旗の台「西ャーリー」

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この店でしか体験できない個性と言えば、真っ先に思いつくのが旗の台「西ャーリー」の塩もつ煮。なんと出汁に魚介が使われており、その深い味がしっかり出ているもつ煮である。もつ煮に魚の出汁⁉︎と驚くが、これが本当においしい。魚がもつを全く邪魔していないのだ。料理は科学であり、成分と成分の掛け合わせによって生成された化合物が、我々の舌に触れたとき、おいしく感じる。……なんだか全然おいしそうじゃない書き方をしてしまった。何が言いたいかというと、魚の成分と、もつの成分、およそ相入れなさそうなこの2つが、かようにもマッチすることに驚くのだ。魚が、もつが、互いの旨みを引き立てあっているのがこの一杯である。汁で呑める。

 

江古田「江古田ホルモン」

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餅は餅屋、モツはモツ屋。それがこの「江古田ホルモン」の煮込みだ。この店はその名の通りホルモンの専門店。

その専門店が選んだ良質なモツを使った煮込みがうまくないわけがなかろう。良いモツは程よい甘みがある。その甘みが溶け込んだ煮込みのスープ、これが最高にうまいのだ。

 

新宿三丁目「もつ煮込み専門店沼田」

餅は餅屋、モツはモツ屋、その2。こちらもモツのプロが作る煮込みである。

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この店は私が何度も何度も色々なところで紹介しまくっているので、昔から見ていただいている方には耳タコだとは思う🐙

それでも、しつこくしつこく紹介する。だって旨いんだもの。

塩もつ煮、味噌もつ煮、醤油もつ煮、カレーもつ煮、と様々な種類のもつ煮込みがあって、上の写真は味噌もつ煮。

でも個人的には醤油もつ煮が一番好き(醤油もつ煮は写真が行方不明だった)。

当時からこんなに何度も醤油もつ煮を推しているくせに、なぜ写真が行方不明なのか自分でも謎である。

居酒屋において、もつ煮込みが店を表すと言われるゆえんが、その下処理の難しさにある。「もつ煮込み専門店沼田」のその丁寧な下処理が生み出すのが、この絶品煮込み。

ネギレバやハヤシライスなど、煮込みだけでなく全方位に旨い店なのもあって、いつ行っても混んでいる。予約は必須。

 

椎名町北の誉

この店の二大名物が、特製煮込みとピンピン焼き。

煮込みにはモツが入っていない。シンプルにお出汁の味で勝負している感じだ。

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この煮込み、わりと大きめなのだが、スルスルと飲めて呑めてしまうからか、一人一杯食べる人も少なくない。

椎名町きっての人気店でありコロナ禍真っ只中でも客足が途絶えてなかったほど。予約必須だ。

 

目黒「ほろよい党」

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具材が大胆な大きさでゴロゴロ入っているのが特徴。噛むほどに脂が口に広がり、コクがあって非常にうまい。

かと思えば、大根や豆腐が入っていて、強めの脂とのバランスがよく取れている。

大根、豆腐、卵……ほとんどおでんであると言えなくもない

ちなみにこの店は唐揚げも非常にジューシーで旨い。

 

◆The・大衆酒場の煮込み3選

ここからはThe・大衆酒場、The・せんべろ、なお店を載せていく。

大井町「信州屋」

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いわゆる、せんべろセット的なものがある「信州屋」。その名の通り信州由来の野沢菜などもあるのだか、それ以上の名物が煮込みである。

なお、前述の大井町「のぼる」で煮込みを紹介できなかった理由がこれ。「信州屋」と同じ日のロケだったため、“煮込みかぶり”を避けたメニュー選定になったのだ。テレビあるある。

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なんとこの煮込み、70年間ずっと変わらぬ味だそうだ。もともとはこの煮込みひとつだけしか出していなかったこの店。お店の歴史をこの煮込みの中にすべて詰め込んで、煮詰めて、ここまでやってきた。

そんな歴史に思いを馳せながらいただくと、煮込みの味がより深まる気がする。煮込みやおでんなど、グツグツと煮る料理はこれだから好きだ。背景込みの味といったところだろうか。

それにしてもついさっき、料理は成分と成分の化合物である、と言っていた奴が急に何を言い始めるんだろう。

でも、気持ちの問題でメシが旨くなるなら、このような「思いを馳せる」という食べ方の選択肢があってもいいではないか。

実際、この店の煮込みはトロッとしていて濃いめの味。店のすべてをこの鍋に入れて煮込みました、と言われたら納得する感じの味なのである。

老舗ならではの空気感を感じながら食べてほしい。

 

有楽町「もつ焼き ふじ」

The・大衆酒場と言えば、の店。有楽町ガード下が誇る二大名物店のうちの1つだ。

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「ふじ」の煮込みはとにかく美しい。いつ行っても同じ色、香り、美しさ。そしてシンプル。もつ!ネギ!以上!

シンプルに突き詰めた煮込みの最高峰がここにある。

 

有楽町「登運とん」

「ふじ」の向かいにある「登運とん」。せんべろハシゴして下さいと言わんばかりの立地である。

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「ふじ」の煮込みは豚だが、「登運とん」の煮込みは牛。どちらの煮込みもほんのり甘味があるが、その甘味の種類が異なる。豚と牛の違い、それぞれの良さを、ぜひ食べ比べてみてほしい。

◆殿堂入りのとろける煮込み

新橋「美味ぇ津」

最後に。これを煮込みに入れていいものか少々迷うが、「牛煮込み串」という名前なので煮込み扱いとする。

また、ここまでで紹介してきたお店はすべて一人OKの店だが、この店だけは一人でも大丈夫か電話で要確認である(いずれにせよ常時満席でふらりとはほぼ入れないため、事前に電話予約必須の店ではある)。

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初めてこれを食べたときの衝撃たるや。

牛ホルモンの串だと思ったら、

生キャラメルだったのである。

何を言っているかわからないかもしれないが、本気で言っている。口に入れた瞬間に溶ける串。充満する甘い香り。舌に広がる甘み。

一人一皿限定、予約制のこの串。残りの人生であと何回食べられるだろうか。

毎回、ひとつひとつ食べるたびに、ああ……なくなってしまう……と胸が締め付けられる思いをする。一皿じゃ足りない。でも、一皿だからいいのかもしれない。

丁寧に煮込まれた、いや、丁寧という言葉では言い表せないほど煮込まれた串を、丁寧に口に運び、舌の上で溶かす。もはや「食」というより「体験」に近い。「食」を極限までアミューズメント化したのが「美味ぇ津」の牛煮込み串である。

もう自分でも何を言っているのかわからない。あまたある料理アニメの主人公が、決まって最終的にわけのわからないことを言い出す気持ちが今ならわかる。その目の前の食べ物を言い表わすのには、あまりにも日本語が少なすぎるのだ。それでも手を尽くして伝えようとせんがばかりに、彼らは意味不明なことを口走る。

食べながらふと前を見ると、目の前には茶色いスープがたっぷり入った鍋がグツグツし続けている。長いこと休みなく煮込まれて、食材が溶け込んだ茶色。この店でしか見られない特別な色。煮込みの茶色には、その店が積み重ねてきた歳月が詰まっている。